「鬼滅の刃『無限城編』が変貌する ― Animenzによる壮大なピアノカバー」
- Yeoul Choi
- 1月6日
- 読了時間: 6分

『鬼滅の刃』は、吾峠呼世晴によって描かれたダークファンタジー漫画作品で、2016年から日本で連載されています。物語は、人間を襲う鬼と、それを討伐するために結成された組織「鬼殺隊」との戦いを軸に展開されます。家族を鬼に殺され、さらに妹の禰豆子が鬼へと変えられてしまった主人公・竈門炭治郎は、妹を人間に戻す方法を探すため、鬼殺隊へ入隊します。数えきれないほどの戦いに身を投じる中で、物語は多くの苦難や試練を通して描かれていきます。
迫力あるアクションシーン、感情の深みを持つストーリーテリング、そして生と死の哲学的な対比によって、本作は世界中の観客の心を強く捉えてきました。アニメ化をきっかけに、『鬼滅の刃』は爆発的な世界的人気を獲得しました。2025年7月に公開された『劇場版 鬼滅の刃 ― 無限城編』 は、日本や韓国のみならず北米市場でも大きな反響を呼び、全世界での観客動員数は約9,000万人に迫るなど、驚異的な興行成績を収めました。
『鬼滅の刃 ― 無限城編』あらすじ
鬼舞辻無惨との最終決戦が迫る中、鬼殺隊は無惨の策略によって突如「無限城」と呼ばれる未知の空間へと引きずり込まれます。無限城は、上下左右といった概念が崩壊した広大な構造物で、戦いを有利に進めるため、無惨と上弦の鬼たちによって作り出された場所です。城の内部では鬼殺隊士たちが各所に散り散りとなり、それぞれが上弦の鬼を相手に、一対一、あるいは少人数での激しい戦いを強いられます。無惨への怒りと、妹・禰豆子を人間に戻すための手がかりの両方を胸に抱きながら、炭治郎は圧倒的な力を持つ強敵たちに立ち向かっていきます。
無限城で繰り広げられる戦いは、単なる勝敗を超えたものとなります。それは、人間と鬼、それぞれが抱える執念や選択、信念が真正面からぶつかり合う一連の対決でもあります。戦闘が激しさを増すにつれ、鬼殺隊は極限まで追い詰められていきます。しかし、隊士たちの想いが互いに繋がることで、彼らは少しずつ鬼舞辻無惨へと至る道を切り開いていきます。無限城での壮絶な戦いは、やがて訪れる最終決戦へと繋がる、極めて重要な転換点となるのです。
「無限城へ」/椎名豪 作曲
本作を通して流れる数ある劇中音楽(OST)の中でも、特に象徴的な一曲が、作曲家・椎名豪による 「無限城へ(To the Infinity Castle)」 です。この楽曲を初めて耳にした瞬間、まるで巨大な門の前に立たされているかのような、圧倒的な感覚に包まれます。椎名豪は、大編成のオーケストラにコーラスを重ねることで、場面のスケールを大きく広げ、単なる背景音楽にとどまらない、物語性を備えた音楽的瞬間を作り上げています。
重厚な打楽器と金管の響きが緊張感を高め、差し迫る脅威を予感させると同時に、避けることのできない大規模な戦いの幕開けを告げます。その上で疾走するように重ねられる弦楽器の伴奏は、血鬼術によって英雄たちが無惨の要塞――迷宮のように入り組んだ空間――へと引きずり込まれる混沌の瞬間を鮮烈に想起させます。音楽は一切立ち止まることなく前へと突き進み、歪んでいく空間と、方向感覚を失っていく登場人物たちの感覚をそのまま映し出しているのです。
後半に入ると、オーケストラの響きはさらに重厚さを増していきます。打楽器を軸に、コーラス、ピアノ、シンセサイザー、弦楽器、金管楽器が一体となって旋律を奏で、まるで長きにわたる戦いの始まりを告げる壮大な宣言のような印象を残します。
Animenzによる「無限城へ(To the Infinity Castle)」のピアノカバー
この壮大なサウンドを、本当にピアノ一台で書き起こすことはできるのでしょうか。今回取り上げる Animenzによる「無限城へ(To the Infinity Castle)」のピアノカバーは、原曲が持つダークで緊張感に満ちた雰囲気を忠実に保ちながら、構成面においても原曲に極めて忠実な仕上がりとなっています。それと同時に、原曲で用いられている多彩な楽器それぞれの特徴を、一台のピアノで鮮やかに再現している点も大きな魅力です。
トレモロが生み出す、迫り来る太鼓の気配
原曲の旋律から始まる導入部の終盤で、左手にトレモロが現れます。トレモロとは、同じ音(あるいは近接した音)を素早く連続して演奏する奏法を指します。ピアノにおいては、主にオクターブ離れた音を外側の指で交互に弾くことが多く、腕や手首のコントロールが非常に重要となるため、技術的にも難易度の高い表現です。この導入部では、そのトレモロが弱い音量から徐々に力強さを増していき、まるで遠くで鳴っていた太鼓の音が次第に近づいてくるかのような効果を生み出しています。そしてそれは、音楽の中でこれから始まる大きな出来事の到来を告げる合図としての役割を果たしているのです。
推進力を生む弦楽的テクスチュアとしてのオスティナート
楽曲全体を通して登場するオスティナートとは、短いリズムや音型を繰り返し続ける手法を指します。原曲では主に弦楽器がこの役割を担い、サウンドトラック全体の流れを力強く推進しています。一方、Animenzのピアノカバーでは、このオスティナートにより高度な技巧が求められます。同じ音型が繰り返されながらも、前半では音域や手のポジションが変化していくことで、緊張感が段階的に高められていきます。左手で始まったオスティナートは、続くセクション(0:51)で右手へと受け継がれ、短く切るようなスタッカート奏法で演奏されます。この表現は、弦楽器におけるスピッカート奏法──弓を弦の上で軽く跳ねさせ、繊細なコントロールによって音を粒立たせる奏法──を想起させ、ピアノでありながら弦楽的な質感を鮮やかに描き出しています。
シンセサイザーを想起させる、繊細な高音域
楽曲が後半へと進むにつれて、音楽はますます緻密さを増していきます。2分前後の箇所では、原曲におけるシンセサイザーの音色を、極めて高い音域での16分音符による素早いパッセージによって模倣する場面が登場します。このセクションでは、右手が高音域を高速で駆け巡る一方、左手はアルペジオと和音を同時に繊細に演奏しなければなりません。ダイナミクスは p(弱音) と指示されているものの、音楽的には非常にドラマティックで、技術的な難易度も高く、十分な練習を要する箇所となっています。
隠された音色 ― 親指と内声が担う役割
Lセクション(3:10)では、原曲の主旋律が右手に再び現れます。この箇所では、最上声の旋律を明確に浮かび上がらせながら、同時に音域の広い左手パートを安定してコントロールする必要があり、演奏者には非常に高い集中力が求められます。続くMセクション(3:44)では、主旋律が中音域、すなわち内声へと移行します。この場面では、視覚的に分かりやすい右手や左手の外声に意識を向けるのではなく、しばしば左手の親指によって奏でられる内側の旋律線を丁寧に際立たせなければなりません。そのため、このパッセージは技術的にも特に難易度の高い箇所となっています。
まとめ(結論)
ピアノはしばしば「小さなオーケストラ」と称されますが、Animenzの本カバーは、まさにその言葉を体現するものと言えるでしょう。単に旋律を奏でるだけでなく、打楽器、弦楽器、管楽器、さらにはシンセサイザーに至るまで、オーケストラ全体を思わせる多彩な音色をピアノ一台で描き出しつつ、原曲の構成にも忠実であり続けています。
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