エクストリーム・ポップはピアノで再現できるのか？映画『チェンソーマン レゼ編』OST「IRIS OUT」とRu’s pianoによるピアノアレンジ

<Chainsaw Man “Reze Arc”>

日本のアニメファンなら、『チェンソーマン』を無視することはできません。『チェンソーマン』は藤本タツキによる作品で、2019年から日本の週刊少年ジャンプで連載されており、現在も続いています。

物語の序盤では、主人公・デンジが偶然にも特異な変身能力を手に入れ、悪魔狩りとして未知の悪魔と対峙しながら混沌に巻き込まれていく様子が描かれます。『チェンソーマン』は、暴力的でありながらも人間らしい感情を深く描く独特の世界観で知られ、日本国内だけでなく世界中で人気を博しています。デンジは人間と悪魔の境界に生き、普通の幸せを夢見ながらも、常に残酷な現実に直面しています。

今年9月に日本で公開された映画『チェンソーマン レゼ編』は、TVシリーズの物語を引き継ぎ、デンジが謎の少女・レゼと出会い、その後に訪れる愛と葛藤を描いています。

派手なアクションの一方で、人間関係の不安定さや心の傷を繊細に表現しているのも特徴です。

本日は、『チェンソーマン』の主要OSTである「IRIS OUT」をご紹介します。この楽曲は先行公開されたテーマソングで、前作の『チェンソーマン』OSTでも楽曲制作に携わった米津玄師が歌唱を担当しています。

「IRIS OUT」は、華やかなリズムベース、ドラム、ピアノラン、シンセサイザーの重なりによる、テンポの速いポップソングです。

タイトルの「Iris Out」は瞳孔が開く現象を指しており、その名の通り、約2分30秒という比較的短い曲ながら、強烈な印象を残しつつ映画の雰囲気に完璧にマッチしています。

<IRIS OUT : OST from Chainsaw Man Movie>

『IRIS OUT』の構成（Structure）

『IRIS OUT』の構成は以下の通りです：

イントロ – ヴァース1 – プレコーラス – コーラス1 – ブリッジ –

ヴァース2 – プレコーラス2 – コーラス2 – アウトロ

『IRIS OUT』は典型的なポップソングの構成に近く、短い曲ながらも各セクションを効率的に収めています。それぞれのパートを詳しく見てみましょう。

• イントロ：シンセリフとベースが曲の雰囲気を即座に作り出し、その後のピアノのトレモロで期待感を高めます。壮大なイントロがリスナーを曲の世界へ引き込みます。

• ヴァース：ボーカルが入り、徐々に引き込まれるように展開。繰り返しによって緊張感が生まれ、リスナーを感情の流れに誘導します。

• プレコーラス：ラップのように素早く歌われ、テンポを維持しつつ、「IRIS OUT」という歌詞で一瞬落ち着きを与え、爆発的なコーラスへとつなぎます。

• コーラス：曲中最も爆発力があり、印象的なパート。感情の葛藤や、愛と執着のテーマを強調します。

• ブリッジ：リズミカルなフレーズやピアノランでリスナーの集中を高め、感情の流れを支えます。

• アウトロ：連続するピアノソロラインが特徴で、力強く速いテンポの雰囲気を保ちつつ、曲全体で表現された感情を持続させます。

Ru’s pianoによるピアノ版：原曲への忠実な再現

Ru’s pianoのピアノアレンジでは、原曲のポップ要素がピアノ上で驚くほどの相乗効果を生み出しています。ピアノの広い音域と力強い低音は、ポップソングのエネルギーを十分に表現できます。Ru’s pianoのバージョンは原曲に非常に忠実で、テンポは♩＝134に設定され、元のリズムやテンポを保持。

さらに、ピアノソロ部分ではボーカルのリズムやシンセサイザーの音色を丁寧に再現しています。

<Ru’s piano: IRIS OUT piano ver.>

ピアノで楽器を再現

イントロでは、Ru’s pianoは左手の低音域を使ってベースを模倣し、繰り返される8分音符のリズムで曲の速いテンポに合わせています。

右手はシンセサイザーのメロディを演奏し、原曲の音色や動きをピアノで再現しています。

ヴァース：ピアノの鍵盤を素早く打つ動きが、原曲のラップパートを思わせる話し言葉のような速いフレーズを再現します。左手のリズムと右手の繰り返しの組み合わせにより、緊張感がありつつも目を離せないような雰囲気が生まれ、まるでデンジの不安な鼓動を両手で表現しているかのようです。

プレコーラス：左手のベースがより深く響き、緊張感を高めます。ダイナミクスは徐々に大きくなり、短い音符は伸ばされ、パターンも広がります。

コーラス：アレンジは爆発的なサウンドを生み出します。クロスオクターブや強いシンコペーションで、原曲の電子ドラムやギターの役割を置き換え、Ruはピアノ1台でフルバンドのエネルギーを表現しています。

第2ヴァースのプレコーラス：さらに複雑になります。右手は広い音域を駆使し、原曲のキラキラしたシンセサウンドを描写。その結果生まれる余韻は、まるで電子音の質感をピアノで模したかのような響きになります。

ピアノ技巧の頂点

最後のコーラスとアウトロでは、テクニックが最高潮に達します。

右手はメロディとシンセリフを同時に演奏し、左手はドラムループのようにリズムを刻みます。高い手の独立性が求められ、練習も必要ですが、演奏者は原曲のスリルをダイレクトに体感できます。最後の数小節はフェードアウトし、「iris out」効果で締めくくられます。

まるで画面がゆっくり暗くなっていくような余韻が残る演出です。

まとめ

Ru’s pianoのピアノアレンジは、原曲の速いリズムや電子音の質感をピアノに置き換えながら、楽器の物理的限界を超えた表現力も示しています。

繰り返しのフレーズ、オクターブリズム、余韻のあるベースラインによって、原曲の緊張感とエネルギーをしっかりと保持しています。

このアレンジは、原曲の感情構造に忠実でありつつ、ピアノならではの音色によって新たな深みも加えられています。

簡単な簡略版ではなく、挑戦しがいのある忠実な「IRIS OUT」を演奏したい方は、ぜひこちらから楽譜をチェックしてみてください！

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