「Today Akbo による『Epilogue』：クラシック音楽の視点から」
- Yeoul Choi
- 9月9日
- 読了時間: 5分
作曲家の人生がどのようなものか、想像したことはありますか？自然の中を歩きながら、心に浮かんだ旋律を口ずさむ時間でしょうか。あるいは、小さな薄暗い部屋でピアノに向かい、鉛筆を片手に白紙の五線譜を埋めていく長い時間でしょうか。実際には、その両方――ひらめきと規律の繊細なバランスなのです。ときには、音楽がまるで世界そのものからささやかれるように、自然に生まれてくることもあります。けれども別のときには、絶え間ない努力や推敲、そして儚いアイデアを永続する作品へと変える忍耐が求められます。この自発性と苦闘のあいだにこそ、作曲家の人生の本当のリズムがあるのです。
ここに「Today Akbo」という名前の作曲家チームがあります。彼らは実際の作曲家の世界を生きてきました。美しいピアノ曲を中心に、リラックスやアンビエント音楽、睡眠・勉強用のミックス、夜の時間に寄り添う静かなサウンドスケープなどを YouTube チャンネルに公開しています。現在、Today Akbo の YouTube チャンネルは約7,100人の登録者を持ち、およそ153本の動画を配信中です。彼らはジャンルを超えて精力的に活動を続け、心温まる癒しの音楽を届けることで、多くのリスナーに安らぎを与えています。
Today Akbo による「Epilogue」は、2025年にリリースされたピアノ・バラードです。穏やかで歌うような旋律と、落ち着いた安定感のある伴奏が溶け合い、心安らぐ雰囲気を生み出しています。彼らの多くの作品と同じように、この音楽も作曲家の日常や身近な環境から生まれました。チームの作曲家であるキム・ジンウォン氏はインタビューで、この曲の着想についてこう語っています。「静かな午後、カフェで過ごしていたときにインスピレーションが訪れました。」
「その日はとても美しい一日で、カフェでコーヒーを楽しんでいたときに、この曲がふと降りてきました。私は訪れる場所からインスピレーションを得ることがよくあります。その日、ようやくゆっくりと過ごす時間ができて、音楽ノートを開き、心に流れ込むままに旋律を書き留めることができたのです。」
— Today Akbo（キム・ジンウォン）
本記事では、Today Akbo による『Epilogue』のいくつかの特徴を、音楽理論の観点から取り上げたいと思います。作曲家のキャリアはクラシック音楽を基盤としているため、繊細な和声語法が多用されており、同時に親しみやすいピアノ技法で表現されています。
構成
Today Akbo の《Epilogue》は、短い展開部を伴う「ラウンデッド・バイナリー形式（Rounded Binary Form）」で書かれています。音楽理論においてバイナリー形式（Binary Form）は、2つの主要部分から成る構造を指します。大きく分けて2種類があり、ひとつは「シンプル・バイナリー形式（Simple Binary Form）」で、AセクションからBセクションへと直接進み、冒頭には戻らない形です。もうひとつは「ラウンデッド・バイナリー形式（Rounded Binary Form）」で、やはり2つの部分に分かれますが、Aセクションの素材が再び登場し、A–展開部–A’ という構造になります。この「ラウンデッド」な構成は、均衡感と親しみやすさを生み出し、とくに組曲や情緒的な性格小品といった短めのピアノ曲によく見られます。
Aセクション（1–9小節）
最初の9小節はAセクションとして捉えることができます。ここで際立つのは旋律です。低音のB3から始まり、C♯5まで上昇し、1オクターブ以上の音域を駆け上がります。その後、4小節目にかけて旋律は段階的に下降し、冒頭で生じた緊張感を解放していきます。5小節目では、冒頭のモチーフが再び現れるように聴こえますが、旋律的には微妙に変化が加えられています。和声進行にも変化が見られ、1小節目のB♭7和音は5小節目でBm7–E7に置き換えられています。ジャズ和声理論において、B♭7とE7は代理関係を持ちうる和音であり、両者に共通する音（G♯/A♭）がこの関係性を可能にしています。Today Akboは作曲の過程で、こうした和音関係を積極的に活用しているように思われます。さらに注目すべき和声的仕掛けとして、6–7小節に現れる低音部の半音階的下降（A♯–A–G♯–G）が挙げられます。この下降音型は曲中の他の部分でも再登場し、作品全体に統一感をもたらしています。最後に、9小節目では終止が完全に閉じた形ではなく、C♯9和音で解決します。これにより、解決を回避したような半ば開かれた感覚が生まれ、演奏者や聴き手に独特の体験を与えています。
展開部（10–17小節）
10小節目から17小節目までは展開部にあたり、冒頭の主題からやや逸脱した素材によって特徴づけられています。10–11小節と12–13小節ではシークエンスが現れ、それぞれに ii–V–I の和声進行が用いられており、楽曲全体の一貫性を強めています。旋律自体は厳密なシークエンスにはなっていませんが、フレーズ構造には明確な変化が見られます。Aセクションでは4小節単位のフレーズで展開されていたのに対し、ここでは2小節単位の短い呼吸感をもつフレーズへと移行しています。この対比は、和声シークエンスの効果的な使用によって実現されています。
A’セクション（18–31小節）
A’セクション（18–31小節）では、冒頭の主題が再現されつつ、和音の置き換え（ハーモニック・サブスティテューション）やモードの交換（モーダル・エクスチェンジ）、そして繰り返し現れる半音階的低音線が組み合わされています。これらの技法により、曲全体に統一感と対比の両方が生まれ、形式が効果的にまとめられています。
結論
全体を通して、《Epilogue》は、Today Akbo がクラシックの和声語法を親しみやすいピアノ表現と融合させる能力を示しています。曲の規模はコンパクトですが、緻密に構成されており、情緒的な旋律と明確な構造のバランスが巧みに保たれています。
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